「ビール離れ」を懸念するのって色々変だと思う訳

若者のビール離れが進んでいることが騒がれていますが、

「ビターで辛口、料理に合う缶チューハイ!」、「缶チューハイで乾杯!」という対抗策には「え、それってどうなの?」と疑問を感じています。

 

商売の良いところは、お客さんを満足させるところにあるのだと思う訳ですが。。

 今日はこれをテーマにちょっとおかしな需給の関係について考えてみたいと思います。

 

まずは簡単に飲料業界の「今」をおさらいしておきましょう。

▼ポイント

①飲み会ではまだまだビールが主流

②自宅では発泡酒や酎ハイが伸びている

③ただし、そもそもお酒の需要自体が伸び悩んでいる

 

 

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乾杯でまず飲むお酒は?| 毎週アンケート | ハピ研|アサヒグループホールディングス

 

 

上の表からも分かる通り、

え!?皆意外とビール飲んでるじゃん!わざわざチューハイとか掘り起こす必要ある?となる訳ですが、案の定人の目を気にする必要のない自宅では、ホントは飲みたい発泡酒やチューハイが主流になってきています。

▼下図

 

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乾杯でまず飲むお酒は?| 毎週アンケート | ハピ研|アサヒグループホールディングス

 

ならば!とお家で美味しく飲めるチューハイを作ったり発泡酒のクオリティを高めたりと試行錯誤されているようですが、そこも上手くいっていないご様子。酒類生産量は全体的に下降トレンドです。

▼下図 特に、ビールの低下が顕著。

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国税庁課税部酒税課 酒類製成数量の推移

そして遂に、やってきた訳です。「乾杯でも飲める大人のチューハイ!」を作る時が。

という一連の流れの中で、満を辞してビターなチューハイが登場するのか?と微妙な気持ちになるのです。

 

 

だって、ちょっと立ち止まって考えてみると絶対に変なんです。

過去20年間でいなくなってしまった1,500,000kg分のお酒を消費していた人たちは、今どこで何をして(飲んで)いるのでしょうか。

食事の時に飲み物を飲む人が減ってしまったという話はあまり聞きませんよね。

そう思って探してみると、すぐに見つかりました。こちらです。

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            (一般社団法人 全国清涼飲料連合会)

ソフトドリンクを愛飲するトレンドです。

内訳は特に炭酸飲料やノンアルコールビールの伸びが顕著です。普通に生活していても感覚的に納得できるデータだと思います。

炭酸水を飲んでいる若い人、すごく多い気がしませんか?

世の中は「ビール離れ」と合わせて、もっと「お酒離れ」にもっと注目するべきです。

今でも飲み会では9割の人がビールで乾杯って、何かおかしい気がします。

皆、無理してない?

 

そして満を辞して登場。

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「ビール派が多いので、皆に合わせて最初はビール」(女性40代)、「外飲みはメニューを見なくても決められるもの」(女性30代)「ビールがあまり飲めないので、いつも甘いカクテル系やチューハイ系。ビールで乾杯に憧れますが…」(女性30代)

乾杯でまず飲むお酒は?| 毎週アンケート | ハピ研|アサヒグループホールディングス 

 

 

これについても、そもそも無理にお酒を飲ませなくてよくない? と思ってしまいます。

もともとビールやお酒全般が不調になってきたのかを考えると、女性の社会進出や、経済の成熟で生まれた「草食」と呼ばれる男性など、確実にニーズの変化があるのは明らかです。

そういう人たちにとってみれば、ビールはエネルギッシュでカッコはいいかもしれないけど(僕はそうとも思わんが)、それよりも自分の好きなものをいつでも飲みたい!と言える柔軟な環境が一番望ましい筈です。

だって酒類メーカーの人たちが焦っているビール離れやお酒離れなど彼らにとっては全く関係ありませんから。

 

そんな新しい消費者に対して、「大人の味覚に応えたチューハイ」を投入する、というのは未だ過去の成功イメージに引っ張られ過ぎている感じがしてなりません。

ビールの需要が落ちているから、ビールより少し飲みやすいお酒にしよう、という判断からは、ビール大好き世代の「安全パイ」な考えが透けています。

 

「乾杯用にぴったりのお茶」など、多様化する客層に即してコンセプトを押さえていく方がより自然ですし、より多くの人の乾杯がもっと美味しくなる筈です。

 

(2018年2月19日追記)

こんな多様化するコンセプトは、シェアが稼げないから大手は参入できませんよね、っていう反論が思いつきましたが「それってイノベーションのジレンマの典型じゃん」で速攻片付きました。

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