『大丈夫やで2』という本がよく売れているらしい

ども。

 

先日も書きましたが僕は本屋が大好きなので、ふらふらと歩いていたところ

『大丈夫やで2』という本が目立つところに並べられていたました。

ベテラン助産師さんの心温まるアドバイス本で既に10万部に到達したそうです。さぞ沢山の女性の不安に寄り添った良書なんだろうと思うのですが、少し立ち止まって調べてみると年間の国内出生者数は約100万人程度ですから、単純計算すると出産に関わる10人に1人の割合いで購入していることにあります。

ですから、恐らくご懐妊された方とそのご家族以外にも1万人ぐらいは購入しているでは?と推測しています。ターゲットした顧客のみが購入する商品というのは考えづらいですから。

そもそも僕がこんな数字を調べたのも、表紙の助産師さんの笑顔が何とも素敵で、安心感が溢れていて、「これは誰でも手に取ってしまう人がいそうだなぁ〜(く〜、ニクい表紙だ!)」と思ったからです。でもそれだけではなく、どうしてこんなに人気なんでしょうか?

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現代人は不安の中を生きている、としばしば言われていますが楽観的な僕はそういったことについて深く考えたことがありませんでした。

ただ、これだけ「安心本」が売れていることを知るとムクムクと興味が湧いてくるものです。現代人の不安って一体なんなんだ?

 

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まず、日本の精神病の患者数は増えて流のは事実です。但し、この数字は受診者ベースの数字なので、これだけでは必ずしも病気にかかった人の数が増加した証拠とは言い切れません。これまで障害と認識されずにずっと存在していた発達障害と同様に「ようやく発見されただけ」の可能性もあるためです。又、あえて示しませんが高齢者の患者数が増加していることからも、平均寿命の伸びが患者数増加の一因と言えるかもしれません。

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更に、先進国に患者数が偏っている点からも、病院で病気と「認定」されることが前提の数字だけでは納得することはできませんから、ますます分かりません。

精神の不安定は「現代病」とも呼ばれているのですから、やはりもう少し考えておくべきでしょう。

 

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別の切り口からも、これまでの変化を考えてみます。

有益な情報を発信し続けているTEDトークにも登壇した社会学者であり、哲学者でもあるRenata Salecl氏が「人生の選択肢の増加」と不安増大の関係性を指摘しています。(Renata Salecl: Our unhealthy obsession with choice | TED Talk

確かに、無我夢中で働きさえすれば(それももちろん大変ですが。)経済全体の上昇に合わせて成果が返ってくるという良い循環が回っていた時代には、いわゆる有名大学に入り、大きな会社に入り、マイホームと自家用車を手に入れて家族と幸せな老後を過ごす、というゴールデンルートがありました。当時は(今も?)、いかにその理想に近づくかが目下の関心事でしたから他にわき目を振っている暇も、メリットもありません。

しかし、今は足元から押し上げてくるような上昇気流は吹いていない為、皆が同じ夢を見ることはできなくなりました。限られた経済のリターンからでは全員が同じ夢を描くことができなくなったためです。このように強力な理想像が失われたことで、多くの人はより自由に物事を決められる(決めなければいけない)ようになっています。

 

こういった話はよく知られていますが、実際の変化を経験をしたことのない僕らのような世代にはいまいち手触り感のない情報かもしれません、そんな人は一度アフリカを訪れると良いでしょう。突拍子も無いように聞こえますが、先に紹介したTEDトークの論理を非常に納得感を持って理解することができると思います。

良い例として、僕がアフリカの国を旅する中で出会った、圧倒的な熱量を放つ商売人たちは、まさに生きるか死ぬかの「モーレツサラリーマン」でした。

ひとたび日本人が通りがかったと分かれば大声で僕のことを呼びます。「ジャパニ〜!ジャパニ〜!」腕を掴み、商品をつかませ、強引極まりない商売です。うるさいし、怖いしで最悪な気分でしたが、そんな中でも忘れられないのは彼らの熱のこもった目です。彼らの目には、オフィスであくびをしながらパソコンで作業をしているような「惰性」は一切なく、まさに生きるか死ぬかの眼力で販売攻勢を仕掛けてくるのです。他に多くの術もないでしょうから、それはもう全力である人はオレンジジュース、またある人はスカーフを売ってくるのです。

ああ、日本の会社で72時間働き続けた戦士たちもあんな感じだったのか、と想像してしまいます。(あんなに乱暴ではないと願いたいが。)

というか、それだけ働いて少しでもそのことに悩んでたら、ほんとソッコーで絶望すると思います。

 

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やや話が逸れましたが、現代の不安が「選択肢」によって生まれているとしたら、それだけ社会に「余裕」が生まれた証拠なのかもしれません。このことを知るだけでも少し気持ちが楽になるかもしれません。現代人が昔よりも弱いのではありません。考える余裕を手に入れたから少し、考えすぎちゃっているのです。

『あんぽん』というソフトバンクグループの長である孫正義氏の伝記にそれと近いニュアンスのことで、「ヤンキーなんかやって遊んでいられる人はそもそも生活に余裕があるのだ」と書かれていました。

極端な話ですが、今日の食事に困る生活を強いられれば、何をするか、できるのか、できないのか、なんて漠然とした不安は消えていくのかもしれません。

答えは1つで、ご飯探しにいこ、絶対に、となりますから。

 

 

まさに、周囲が一見豊かになったとしても貪欲に自分のゴールに向かって突き進んでいく、ホリエモンの言葉も共通の本質をついているようです。

 

ただ、わき目も振らずに突っ走る!!という人は一握りなのでしょうから、大半の人にとってはキャリアも恋も友人も、と悩みや不安は尽きません。

優しく笑顔で、不安を和らげてくれる存在が人気を集めるのも頷けます。

ただ、まずは自分たちが置かれた外的な状況を理解しつつ、あとはやっぱり好きなことに熱中していく気持ちも忘れずにいたいところです。

大丈夫やで!も大事ですが、皆どこかで前に進む方に転じていきたいですね。